- 合唱団への想い(指揮者:当間修一)
定期演奏会、第20回を迎えた今年(2010年)のプログラムに団が誕生してから29年が経っていますとの記事がありました。
29年と言えば、創設は1981年ということになります。しかし、「コーロ羽衣」の創立および、その歴史を年月で連記して表すことに躊躇する私です。
活動の年月を「点」でとらえることができません。私にとっては「コーロ羽衣」の歴史は蚕の繭を紡いで作った生糸のように、長い糸という「線」との捉え方です。
事の始まり、それは私の姪の母親、つまり私の姉の「誘い」から始まりました。
姪が通う小学校でPTAの合唱団を作ることになり、その指導に弟の私に「どうだろうか?」との直々の打診でした。
あまり気乗りがしなかった私が引き受けた理由は「とにかくドの音から」ということ。
つまり楽譜の読み方から始めて欲しいということが私を惹き付けました。
本当にゼロからの出発でした。遅々としての進み具合でしたが楽しい想い出一杯の創設時でした。
通学していた子どもさんたちの卒業と共に、「PTAコーラス」は発展的解消へ。替わって「コーロ羽衣」と改名し、一般合唱団としての活動が始まりました。
指導し始めてから9年間は「箱入り娘」です。どこにも出さないで(地元の、年に一度のPTAコーラスの発表会には出ていましたが)合唱の基礎作りが続きました。
満を持しての定期演奏会、糸としての「線」をいよいよ強く嫋(たお)やかに社会へと巣立つことを提案しました。
その後の活動は私の音楽家としての活動と並行します。
叱咤した記憶がありません。激励はしました。
音楽を続けるのは「楽しさ」があるからです。練習で「楽しさ」を伝えました。それは人生の「楽しさ」にも通じます。
共に「楽しさ」を創りたいと実践してきました。
浮き沈み、波はあるものの、「線」としての曲線は絶えず右上を示し向上してきたと思います。
いつの時でしたか、団の食事会で涙したことを忘れることができません。それはゼロから育てられたことへの自負と感謝。
そして確固たる実績を築いてきた団員の力強さ、エネルギーと何よりの暖かさです。
以前は風光明媚として知られていた浜寺海浜。浜寺・羽衣の砂浜は美しい想い出と共に脳裏に浮かびます。
現在、海は埋め立てられ、煙吐く煙突が立ち並ぶ一大工業地域です。かつての美しい砂浜は無くなりましたが、公園は市民の憩いの場となっています。
この地に「合唱音楽」を根付かせたいとの思いが活動の大きな推進力です。
「人」が音楽を奏でます。「音楽」は人を創ります。地域に根ざした、地道で生活に密着した活動をと思っています。
- 第20回定期演奏会の感想
回を重ね第20回を迎えた定期演奏会。
ホールは音響の良い、高石市民文化会館「アプラホール」です。いつもこのホールの響きには助けられています。
節目と成る20回とはいえ、記念演奏会などと銘打ちしない例年通りのプログラムを組みました。
去年、千原英喜氏に委嘱し(「ちゃんがちゃがうまこ」)、初演をしたことは団にとって大きな飛躍の年、その翌年の今年でした。
今年は団内的には「ブラームス」がメインでした。
ア・カペラですし、様式も少し解りづらい、おまけに苦手意識の強いラテン語のテキスト。
(本当は苦手意識などもたないほどの実力はついているのですが、ご本人達は認めませんね。(笑))
本番も現在の実力として上手くできたと思います。まぁ、他の曲と同じで幾つかの課題は残りますが、ステップとしてのステージは充分に果たせたと思います。
第3ステージに私の作編曲のものをと決まりました。(偽りなく本音なのですが、自作の発表はとても辛いです。(笑))
今回のために作ったのですが、「みすゞの世界」に一歩入りたくて、その一念で曲を書きました。
大曲でなく小品だから書けました。特に「あさがほ」のような曲を書きたかったように思います。
後で読ませて頂いたアンケートにもそう悪いものはありませんでしたから、ちょっと胸を撫で下ろしています。(笑)
最後のステージ千原英喜「良寛相聞」は彼女たち自信の演奏でした。
歌い所を知って歌っています。手直しを要求すれば直ぐに反応します。これは曲のイメージがすでに入った状態だからですね。
私も本気で(というのもおかしいですが)振りました。「良寛さん」の風貌が私には見えていたと思います。
アンケートを読ませて頂いて、また演奏中の会場の空気から少し例年とは違うものを感じた私です。
何と言いましょうか、「合唱」の風を感じたのですね。
良く聴いて下さっている、しかし何となく硬い。
例年ならば応援の空気といいますか、温かい眼差しと共に一緒に揺れる空気を感じたのですが、今回は揺れが少ない。
合唱団がそのような空気を作っているのか、あるいは私の棒がそのようにさせているのか?
演奏中からちょっと気になっていましたね。
「『合唱』としては判らないけれど」、「音楽は楽しかったよ」とは例年です。「お母さんがんばって」とか「なかなかやってるね」とはご主人。
遠くからお出で頂いていた方からも「毎年、上手くなっているね」との反応を会場から感じたものでした。
今回も確かにその雰囲気はあったのですが、少しそこに違う雰囲気が混じった・・・かもしれないという空気です。
内輪だけのぬるま湯的に喜び合っている演奏会は嫌です。開かれた演奏会にしていきたいとの意向ですね。
今回の空気は広がったのか、それとも狭くなったのか?
良いように繋がっていけばいいのですが。
逞しく、また賑やかに育っている団員です。(笑)
皆、しっかりした足取りになってきたと思います。
これを機に、「ホームページを立ち上げましょう」と言ってしまった私です。
私が振る合唱団でホームページを持たないのは「コーロ羽衣」だけになっていました。
名実ともに社会へお目見え、いや世界に繋がることを宣言したのです。(笑)
こうして記念すべきホームページが立ち上がりました。
そしてそのことでも記念すべき「定期演奏会」となりました。
一層の充実を!
楽しく、生活とリンクし、地域に根ざし、人としての夢を追える、そのような音楽を求めた活動としての「紡いだ糸の線」はこれからも続けようと思っています。
ご来場くださいました皆様に、そして多くの方々からのご声援に心からお礼を申しあげます。
「ありがとうございました」
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